クソして寝よか

アイルランド・ダブリンでの生活や旅の記録

ダブリン最東端を目指す旅

ダブリンの生活のもろもろにつかれを感じ、この一週間できる限り人との関わりを減らしてひたすらカフェや公園で本を読んでいた。それでもアイルランド人は噂に聞く通りフレンドリーだ。

 

"コンニチワ! 日本人かい?"

"なんの本読んでるの?"

 

ひとり公園でサンドイッチを食べていてもカフェで本を読んでいても図書館でCDの棚を眺めていても声をかけてくれる。もちろんこういったことは嬉しく、つたない英語でなんとか彼らとの会話を楽しむ。アイルランド人は本当におしゃべりが好きだ。

 

それでも一週間も本ばかり読んでいるとさすがに気が滅入ってきて、週末はちょっと離れたところまで出かけようと計画した。リフレッシュしたいときは海に行くものだと相場が決まっている。ダブリンはアイルランドの東に位置する港町だ。せっかくだったら東の果てまで行って海を見てこよう。

 

街のいたるところに設置してあるレンタサイクルは3日間使い放題で5ユーロとかなりのお値打ちだ。乗り心地はお世辞にも良いとは言えない。これを借りてダブリン最東端を目指し出発した。ちょっとしたものでもやはり旅立ちの瞬間はいつも胸が踊る。

 

 

ダブリンの中心を東西に流れるリッフィー川に沿って東へ東へ走り続ける。港が近づくと大きな工場や船が目に入ってくる。次第に空気も川の水も汚くなる。こういった汚い部分があるから僕たちは町で快適な生活を送れるのだ気づく。

 

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悪臭立ち込める工場廃水

 

 

さらに自転車をこぎ続けると潮の香りが風に漂ってきて、やがて砂浜にたどり着いた。

お気に入りのドクターマーチンを脱ぎ捨て裸足で浜を歩くと砂の柔らかい感触が気持ちいい。少し照れながらも周りに合わせてシャツを脱ぎ、上半身裸で砂浜に寝転がると背中が暖かい。風が通り抜けお腹は涼しい。

 

小一時間ほど流れる雲をぼうっと眺め寝ていると貧しいクリエイティビティがふつふつと湧き上がってきた。女体の制作にとりかかるも、思う以上の速さで潮が満ちてきた。片乳が完成したところでそれは波に消えていった。

 

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 波に消えていった片乳

 

塩潮の満ち引きと、雲を運ぶ風を感じ、日本にいる友達はそろそろベッドに入る時間だろうかと思うと、紛れもなく地球は回っているのだと気づく。

 

砂浜を離れ、また自転車のペダルを踏む。最東端はすぐそこだ。

  

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最東端が見えてきた

 

こうゆうのを岬と言うのだろうか。この先にある赤い灯台がダブリン最東端だ。

5分ほど歩けば着くだろうと見込み、自転車を停め歩き始めたが、近くに見えた灯台は意外と遠かった。

 

15分も歩いてやっとたどり着いたそこには、がたいのいい釣り人たちや、肩を寄せ合うカップル、犬を連れた家族。意外とたくさんの人がいた。人はみんな端っこが好きらしい。

 

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最東端にそびえる真っ赤な灯台と釣り人達

 

最東端に腰掛けさらに東に広がる海を眺めていると、向かいのグレートブリテン島、つまりはイギリスからやってきたと思われるフェリーが大きな汽笛を鳴らして近づいてきた。船の名前はユリシーズ。アイルランド文学を代表する小説のタイトルだ。

 

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イギリスとアイルランドをつなぐユリシーズ号

 

太陽の光を十分に浴び、沈んでいた気持ちはしっかりと元気を取り戻した。

また新しい月が始まる。